越川研究室では,臨床心理学に関連する研究を広く行っています。最近は,特に,Mindfulness-Based Intervention(マインドフルネス瞑想を中核におく心理的介入)に関わる研究が多くなっております。
マインドフルネスという言葉は心の観察を主とする瞑想技法や,そうした技法を用いることで現れる心の状態を指して使われています。私たちは多くの場合,自分が注意を向けているものを素材として物事を把握していきます。
たとえば,(意識的であれ無意識的であれ)物事のネガティブな側面に注意が引きつけられやすいと,自分の周りで起こることはネガティブなことが多くなります。対照的に,ポジティブな側面に注意が引きつけられやすいと,自分の周りで起こることはポジティブなことが多くなります。まったく同じできごとを体験しても,どこに注意のスポットライトが当たっていたのかで,体験した事実は異なるものになります。言ってみれば,事実は人の数だけ存在するのです。
そして,自分が体験した事実によって,感情が生じます。ネガティブなことに注意が引きつけられていれば,ネガティブな感情が生じやすくなります。ポジティブなことに注意が引きつけられていれば,ポジティブな感情が生じやすくなります。さらに,ネガティブな感情になると,ネガティブなことに注意を向けやすくなったり,ネガティブなことを考えたり,身体に緊張が生まれたりすることが体系的な心理学実験によって明らかになっています。その結果,さらにネガティブな感情になり・・・といった悪循環が生じていきます。
この悪循環に入らないようにするためには,また入ってもすぐにそこから離れるためには,自分が何に注意を向けているのかに気づき,そのことによってどんな気持ちや考えが起こったのか,つまり自分にどのような反応が生じたのかを観察する力が役に立ちます。そして,そこから注意を引き離したい時には引き離し,自分が注意を向けたい対象に注意を向け変える力が役に立ちます。これらの力は,自らの人生を創りあげていく上でとても重要となる力です。そしてマインドフルネス諸技法は,こうした力を育ててくれる技法です。
越川研究室では,マインドフルネス諸技法の効果,マインドフルネス諸技法の効果的な教授法,マインドフルネス諸技法のさまざまな対象への応用(慢性疼痛,ストレス緩和,鬱や不安の低減など)について,理論と実践の両面から研究を進めています。
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